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クリスマス間近の召天

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    T橋姉が召天されたと連絡を受けた。

    10日の祈祷会は仕事が遅くなって
    教会に行けず、あつろう君から
    連絡をもらって知ったんだけど
    ご高齢だったから「そっか…」
    という思いで受け止めた。
    翌日が前夜式、翌々日が告別式だろうと
    いうことだった。

    11日は京大クリスマスなので
    差し入れできるものも買わなきゃと思い
    午後半休をもらっていた。

    けれどT橋姉とお会いできるのは
    これが最後…と思うと、
    前夜式に出たい気持ちもある。

    でもゴスペルも23日のライブ練習がてら
    出ておきたいし…と迷いに迷った。

    答えが出せないまま当日、朝から
    S田さんとながさわ先生にメールしつつ
    考えた末に出した結論は
    前夜式は出られないけど
    早めに教会に行って納棺に立ち会って
    T橋姉にお別れをして、
    そのあとゴスペルに行こうという段取り。


    たまたまだけど半休とって
    こうして時間が空いたということは
    神様が私に
    「T橋姉に会っておいで」
    と言われてる気がしたし、


    京大クリスマスもせっかくの機会だから
    最初はこのために半休とったんだし
    行っておこう、と思った。



    12日までは休めない。
    それでなくても今月は忙しくて
    半休すら白い目で見られるのに。


    ただ、どんなに
    休みが取りにくい状態であっても、
    ずうーっとあの職場の空間にいると
    息がつまって頭おかしくなりそうなので、
    時々「息つぎ」をするためにも
    自分の心を守るために週半ばに
    休みをとって職場から「離れる」のだ。






    なんとか家に帰っていろいろ用意して
    てきぱきできない自分にいらだちながらも
    教会にたどり着いたのが既に4時;

    ごく近い遺族の方だけが
    応接室でお話されてて、
    納棺の時間もまだ決まってなかったので
    前夜式の案内なども教会の連絡網で
    回していないのもあって、教会は
    ひっそりと静まっていた。


    てきぱき式の準備をされてた
    けいこ先生が


    「T橋姉、会ったことあったんだっけ?
     会堂で、対面してらっしゃい」


    と教えてくれた。


    まだ花とか何も装飾されておらず
    ドラムとかが移動されてる他は
    ふだんと変わらない礼拝堂は
    灯りがこうこうとついて暖房も入って
    明るくあたたかい。


    ドアを開けた真正面、
    十字架の下に、真っ白な布団に
    T橋姉が寝かされていらっしゃるのを
    見ながら、一歩一歩ブーツを鳴らして
    近づいていった。


    ふだん講壇をのせてる壇の上に
    布団がしかれてあり、
    T橋姉はきれいにお化粧されて
    実にやすらかなお顔をされていた。


    ほんの1週間前に
    定期訪問で婦人部の方達が行かれた時は
    お元気だったようだ。



    湯船につかった格好で発見されたそうで、
    顔を水面につけたり苦しまれた様子もなく
    まるで気持ちよく目をとじた時に
    神様に呼ばれたかのように
    亡くなられたようだった。



    フトンのそばまで来たら
    冷たい床にそのまま座って


    「T橋さん、お久しぶりです」

    と声をかけたら、涙が
    おもしろいくらいに流れて来た。




    T橋姉とお会いしたのは
    たったの3回ほどだけ。

    まだ教会に来て間もない頃、
    仕事も定時じゃなかったので
    水曜日の朝の祈祷会のメンバーと
    T橋ご夫妻が住む施設へ
    定期訪問するのについて行ったのが
    初めてだった。

    その次にお会いしたのは
    T橋兄の告別式の時だった。


    さいごにお会いしたのは
    また定期訪問にくっついていって
    T橋姉を訪ねた時だった。


    T橋ご夫妻はA立さんとS田さんの
    手話の先生だったから、
    私自身は直接交流があったわけでは
    ないんだけど、A立さんから
    よくお話はうかがっていた。

    それに教会のいたるところに
    T橋姉の手作りの作品がある。

    クリスマスに必ずつけられる飾り、
    台所にあるつまようじ入れ。

    それらから、T橋姉のやさしく
    きめ細やかな人柄がうかがえる。


    訪問した時、手話できる人がおらず
    かといって私もできなかったので
    村上先生のメッセージを
    口述筆記して概要を伝えた。

    メッセージが終わった後、
    私の汚い字がびっちり書いてある
    紙をやぶり捨てようと思ったら


    「これを後からまた見て、
     聖書の内容と照らし合わせたいし、
     そのメモを下さい」


    とT橋姉が言われたので
    もっときれいに書いておけばよかった、

    カ〜ッ(″_″)って思った。


    仕事が忙しいのを言い訳にして、
    またいつか来れるさ、
    訪問は定期的にしてるんだから
    またそのうち…また来年…

    そう思ってるうちに
    今日まで来てしまった。


    どうして一度でも行かなかったのか…


    また天国でお会いできるけど、
    生きていらっしゃるうちに
    もう一度、お会いしたかった…


    そう思えば思うほど
    涙が後から後から溢れ出た。


    でもそれは苦い悔恨の情からではなかった。





    それはT橋姉が、あまりにも
    穏やかでやすらかな可愛らしい表情で、
    目を軽く閉じているだけのように見えて

    生前のT橋姉の温かさとかつつましさとか
    穏やかさがありありと思い出され、

    実際にお話をしているような感じがして
    もう今は機能停止した肉体しかない、
    というようには思えなかったから。


    だから誰も会堂にいないことをいいことに、
    T橋姉にささやくように話かけた。



    T橋さん、やっと天国でご主人と
    お会いできますね。

    それでもきっとこのお顔を
    拝見するには、ご主人が先に
    天国へ行かれた後も、
    神様の愛の中で穏やかに日々を
    過ごして来られたのでしょうね。


    どうしたらそんなにも満たされたご様子で
    人生を終えることができるんでしょうか??


    私はときどきこの人の世が
    嫌になります。天国へ行かれるのが
    うらやましくさえ思います。

    今日だって職場で嫌な思いをし、
    明日もまた顔をつきあわさなければならない。
    自分を批判されて悔しく思い、
    あなどられまい、負けまいと
    気を張りつめて疲れてしまいます。


    いま、この世の重荷を降ろせたから、
    天国で神様と会えるから
    そんなにもやすらかな表情なんでしょうか?



    そうT橋姉と向かい合い続けるうちに
    はっきりと分かったことがある。



    T橋姉は今、やっと天国でイエス様と
    出会ったのではなくて、
    この世にある時から毎日
    イエス様と共に過ごして来られたのだ。



    イエス様と共に歩んでこられた、というのが
    そのかがやくような表情から
    生き生きと伝わって来た。





    T橋姉と本当に会話をしている時みたいに
    心になぐさめと温かさが
    じわじわと流れて来て、

    イエス様と一緒にいるような
    不思議な、何ともいえない不思議な
    平安とやすらぎにつつまれた時だった。



    慟哭してるうちに
    マスカラもアイシャドーもファンデも
    涙がすっかり洗い流していった。

    人に見くびられまいと身につけてるもの
    心のよろいも流していくようだった。






    Why You love me so Lord I Shall never Know


    ゴスペルで歌ってる
    『NOW BEHOLD THE LAMB』
    の一節がよみがえってきた。


    これはディレクターのゆうこ先生いわく

    「どうして?神様、こんな私のこと
     こんなにも、むっちゃ愛してくれるの。
     もぅどうしてか分からへんわ〜」


    という箇所。

    こんな罪深い私を、
    こんな弱い私を、
    こんなにも愛して下さる。


    人に負けまいと思い、
    人を出し抜こうと思い、
    人が投げかける侮蔑も呪いも悪意も
    そっくりそのまま投げ返したくなる、
    人をゆるせない、憎々しく思う、
    こんな私を包み込んでしまうほどの
    大きな愛で、ありのままで
    愛してくださる神様。

    T橋姉と共におられた神様は
    私をも愛して、一緒にいて下さる方。




    Thank you for the Lamb
    The precious Lamb of God
    Because of Your grace I can finish this race


    感謝します 小羊イエスよ
    尊き神の小羊よ
    あなたの恵みによって
    私はこの競走を終えることができる



    イエス様が共におられるから、
    この人生という孤独な競走も
    最期の時まで、ゴールまで無事に
    たどり着くことができる。

    あるいは人と人と比べたり牽制したりし合う
    くだらない競争に生きることをやめ、
    あなたと共にある新しい人生を
    生きることができる。




    そんな歌詞の意味を思い出しながら、
    全てのraceを終えられたT橋姉の
    すやすや眠っているような
    お顔を見つめた。



    T橋姉がいらっしゃらなかったら
    A立さんもS田さんも手話を
    学ばなかっただろうし、
    そしたら私も手話をしてないだろうし
    手話をすることによって知り合った
    交流を深めた人たちとも
    関わることがなかったのかもしれない。



    1人の人の存在は
    いろんなところへ枝分かれしていって
    つながっているんだ、

    生きて誰かと関わるということは
    自分の思いもしない形で、どこかで
    実を結ぶことなんだと思った。




    クリスマスはイエス様の生誕を
    祝う時だからと、街は華やかで
    うきうきした気分になるけど

    ふと、もの哀しく思う瞬間があるのは、
    イエス様は十字架で死ぬために
    生まれて来たということを
    思うからかもしれない。

    生と死は切り離すことができないもの、
    そして両方とも神様のみ手に
    ゆだねられているものなのだ。





    これからクリスマスになるたび、
    イエス様のお誕生を祝うたびに
    召天されたT橋姉の
    かがやくような表情と、

    お別れを言いながら感じた
    あの、不思議なやすらぎに満たされた
    時間を思い出すだろう。











    <クリスマスの関連記事ツリー

    2007年 たった1人の人が

    2006年 パンダ捜索願い



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